クロールのキックの裏返しが背泳ぎのキックです。しかし、ビート板キックは速いが、背泳ぎのキックは苦手という方は少なくありません。何故でしょう。キックの動作自体はクロールも背泳ぎも同じなのですが、一つ大きな違いがあります。下腿後面(ふくらはぎ)の抵抗です[写真(1)]。クロールでも膝が曲がることによってふくらはぎに抵抗を受けます。しかし、抵抗エネルギーは波の発生として空気中に放

散されますから直接的にブレーキとしてはさほど働きません。一方、背泳ぎではふくらはぎに発生した抵抗は逃げ場が無く放散されませんから直接的にブレーキになります。
背泳ぎのキックは、ふくらはぎが抵抗とならないように、胴体の厚みから大きくはみ出さないように動かすことが肝心です。クロール以上にキックの幅は小さくなります。膝はできるだけ曲げず、幅狭く足首を柔らかく使ったキックです[写真(2)]。
一般的な柔軟性とは必ずしも同じではありません。キックでは足首関節の伸展にかかる柔軟性――正座するときの足首の柔らかさ――が大切ですが、正座のように受動的意味での柔軟

性が高いヒトがキック時にも足首を使えるとは限りません。正座のように外部からの働きかけによって足首を大きく伸展できるヒトでも、自分で能動的な意思を以って伸展できるとは限らないからです。キックはまさしく能動的な柔軟性が大切ですから、自分の足を見ながら柔らかく動かす練習をしましょう。眠っている足先への運動神経が活性化されると受動的な柔軟性と同じ程度まで能動的な柔軟性を高めることができます。