泳ぎを考える上でどうしても水に働きかける作用点である掌の動きや形に目が奪われがちです。水を“つかむ”感覚的な面での掌の持つ重要性は認めなければなりません。しかし、その掌の動きを司る力点である躯幹や上腕の筋肉の使い方についても忘れるわけにはいきません。特にコアである躯幹(胴体)の筋肉は、そこより末端へのすべての力の基地(ベース)となる重要な場所ですし、逆サイドの腕とのジョイント部分としての機能も併せ持っていますから尚のことです。筋肉への意識を活性化させましょう。

筋肉と関節を使って物を持ち上げたり泳いだりします。普通のてこは、シーソーのように力点と作用点との間に支点があります。力点から支点までの長さが、作用点から支点までの長さより長くなっています[図1]。そのため小さな力で大きな働きをすることができ

ます。カラダの筋肉や関節で構成されるてこは異なります。支点が力点の外側にあり、力点から支点までの長さよりも、作用点から支点までの方が長くなっています[図2]。
こうすることによって小さな力で大きな働きをすることはできなくなりましたが、作用点の動きのスピードを上げることができます。
普通のてこだと、支点から力点までの長さを長くすればするほど大きな力を発揮することができますが、それと相反して作用点の動く範囲は狭くなってしまいます。
逆にカラダのてこは力点での小さな動きが作用点では何倍にも増幅されます。動きの範囲が広がることによって大きな作業が可能です。
ヒトのカラダのてこは“スピード”と“稼動域の広さ”という点において非常に優秀です。