トレーニングは、大まかに強度が低い順から有酸素的運動⇒ATレベル運動⇒無酸素的運動に分けられます。ATレベルの運動を細分化し“ATトレーニング”と“LTトレーニング”とに分けることもあります。ATトレーニングは、「乳酸が溜まらないようにするトレーニング」で、LTトレーニングは「溜まった乳酸に耐えるトレーニング」といえます。ここでは、まとめてATレベル運動としています。
無酸素運動も二つに分けて考えることができます。全力で自転車をこいだように1〜3分程度の非常にキツイ運動が一つ。もう一つは、更に短い5秒とか15秒程度のスプリント運動(ダッシュ)です。心拍数が上がったり乳酸が溜まる前に終わってしまう最も瞬発的な運動です。
ATについてもう少し考えてみましょう。ATレベル以下だと楽々と運動を継続することができますが、ATを超えると長い時間(30〜1時間以上)運動を継続することは困難になってきます。
狭心症とか心筋梗塞とかに代表される虚血性心疾患(心筋への血流不足)を持つ方にとっての安全な運動強度の目安が“AT以下”。AT以下での運動療法によって心機能の改善が期待でき、同時に心電図の異常は報告されません。虚血性心疾患以外にも高血圧、糖尿病などの生活習慣病の運動療法としてもAT以下での無理の無い長い時間の運動は推奨されています。
虚血性心疾患の方と健常な方とのATレベルを比べると大きな差異はありません。しかし、ATレベルを超えて最高心拍数に近づくような運動時の余力は心疾患の方と健常な方とでは大きく異なります。健常な方は運動中に苦しさを感じたら、ペースを落としたり休んだりすれば良いのですが、心疾患の方は、「苦しい」と感じたときには発作の危険を誘発しています。それだけに自分のATレベルを把握し、運動がATレベルに達しないように十分に注意をしなければなりません。
心疾患の無い方でも、継続的運動経験の履歴が短く、体力にあまり自信の無い方は、やはり潜在的なリスクを回避するという意味において、ATレベルを超えないような運動強度を心がけましょう。